Φリリナとナツのゆる数学Φ

ほんとうに、そうなのかな。ゆっくりと、たしかめて。

・oO〇 第5話 〇Oo・  五芒星と収束する数列

\displaystyle

次の日。

私は久しぶりに友人のフタバの家に来ていた。
親にはいっしょに勉強するため、と言って出てきたけどフタバといっしょに勉強したことはほとんどない。

フタバの部屋の中。
長めの髪をねじるように束ねているのは、おしゃれというよりは伸びた髪が邪魔だからだろう。

チェックのシャツの袖をまくって、細身のデニムパンツを履いている。動きやすそうな服装がよく似合う。

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いつものように、たわいない話をしたり、フタバの描いた絵をみせてもらったりする。すると、

「この前、エッシャーの展覧会にいってきたんだよー。面白い絵がいっぱいあって面白かった!」

エッシャーといえば、階段を上る人の方向がバラバラだったり、落下した水がいつのまにか元の場所に戻ってグルグル流れ続ける絵とか、不思議な絵をいっぱい描いている人だ。
「いいなあ。私も行きたかった」

「それでね、私もあんな絵描いてみたいと思って、いろいろ描いてみてるの。見たいー?」
こちらを上目遣いで見てくるが、私の返事は決まっている。

「もちろん!見せて」
「最初に描いたのはこんな感じ」

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「わあ、キレイだね」
フタバは得意そうだ。

「うん、なんかこの星型、五芒星っていうんだけど、こんな風にキレイに並べられるのなんでかなと思って調べてみたら、黄金比が関係してるみたいなのー」
「えっ今なんて?」
黄金比だよー」

また出てきた。黄金比。今度はどう関係するんだろう。

「五芒星の辺の長さって、いろんなところに黄金比が出てくるんだよ。こんな感じに」
そういってフタバは私に図を見せる。

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「だからね、辺の長さが黄金比になってる五芒星は、どんどん繋げることができるんだよ。たとえばこんな風に」

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「これもキレイ!……でもこの数字は何?」
「ふっふっふ。リリナならわかると思うよ。考えてみて」

謎をかけられた。
はて。

上の数字は1・2,3,4,5,6,7,8,9と順番に続いている。
下の数字は1,2,3,5,8,13,21,34

……。
あっこれは!私は目を見開く。声が大きくなる。

「もしかして、フィボナッチの数列?」

世界の秘密が垣間見えたような、そんな興奮が体の内からこみあげてくる。

上の数字との対応は、そうか。フィボナッチ数列の番号を表しているんだ。


F_{1}=F_{2}=1 \\
F_{3}=2 \\
F_{4}=3 \\
F_{5}=5 \\
F_{6}=8 \\
F_{7}=13 \\
F_{8}=21 \\
F_{9}=34 \\
\vdots \\

「せいかーい!リリナならわかると思ったよー」
「どうしてフィボナッチの数列がでてくるんだろう」

フタバはちょっと首をひねる。
「あたしもはっきりとはわからないけど、気が付いたことがあるんだー。こっちの図を見てみて」

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「意味わかるかな?たとえば、『7』の星の辺の長さと、『8』の星の辺の長さをたすと、ちょうど『9』の星の辺の長さになるの。」
図をじっくりと眺める。

……。

なるほど、確かにそうだ。
同じように、

『6』の星の辺の長さ + 『7』の星の辺の長さ = 『8』の星の辺の長さ
『5』の星の辺の長さ + 『6』の星の辺の長さ = 『7』の星の辺の長さ
『4』の星の辺の長さ + 『5』の星の辺の長さ = 『6』の星の辺の長さ
『3』の星の辺の長さ + 『4』の星の辺の長さ = 『5』の星の辺の長さ

も成り立っている。
なぜそうなるのかは、隣の式が説明してくれている。黄金比の性質から証明できるんだ!

黄金比\phiの性質 1:\phi=\phi:(\phi+1) から、次の式が成り立つ。
1+\phi=\phi^2

両辺に\phiを順番にかけていけば、次々とこんな式を作り出せる。
1+\phi=\phi^2\\
\phi+\phi^2=\phi^3\\
\phi^2+\phi^3=\phi^4\\
\phi^3+\phi^4=\phi^5\\
\ \ \vdots\\
\phi^7+\phi^8=\phi^9\\
\ \ \vdots

図の五芒星は辺の長さの比がそれぞれ黄金比\phiになってるから、こんな風に並べられるのか。なるほど……。
「面白いなあ。これ使って、あの問題解けないかな」

私がつぶやくと、フタバがそれを聞きとがめた。
「あの問題って?」

私はナツの疑問を思い出しながら説明する。
まず、フィボナッチ数に黄金比\phiをかけた数と、それを四捨五入した数の表を作る。

元の数 ×\phi 四捨五入した数
1 1.618 2
2 3.236 3
3 4.854 5
5 8.090 8
8 12.944 13
13 21.034 21
21 33.979 34
34 55.013 55
55 88.992 89
89 144.005 144
144 232.997 233
233 377.002 377
377 609.999 610
610 987.001 987
987 1597.000 1597
1597 2584.000 2584
2584 4181.000 4181

で、ナツの疑問はこう。

宿題4-1
フィボナッチ数に黄金比\phiをかけて四捨五入すると、どうして次のフィボナッチ数になるのかな?
宿題4-2
フィボナッチ数がおおきくなるにつれて、計算結果がどんどん整数に近づいていくのはどうしてかな?

フタバの目が輝いた。
「おもしろそうだね!いっしょに考えてみようよ」

それから二人でこの問題を考えてみた。
私は式を色々変形してみるが、なかなかうまくいかない。

フタバは大小さまざまな五芒星を並べている。遊んでるようにしか見えない……。
と、視線に気づいたようにこちらに振り向いて

「あ、なんか面白いの見つけたよー」
「どうしたの?」

手元をのぞき込むと、何やら五芒星が規則的にならんでいる。
ん?本当に規則的なのかなこれ?規則がありそうな、なさそうな。

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「どうやって作ったの?」
「さっきの式だよー。今度はこういう風に解釈してみたの」

\phi^7=\phi^6+\phi^5\\
\phi^6=\phi^5+\phi^4\\
\phi^5=\phi^4+\phi^3\\
\phi^4=\phi^3+\phi^2\\
\phi^3=\phi^2+\phi\\
\phi^2=\phi+1

「わかんないかなー。こうすればわかるかなー」

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「あっ」
なるほど、さっきの式と五芒星の辺の長さが対応している!

そのとき、フタバの目がキラッと光ったように見えた。
「およ?これフィボナッチ数だ」
そう言ったかと思うと五芒星の横に数字を書いていく。

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なんと、またフィボナッチ数がでてきたですと?
これは使えそうな気がする。

さっきの図をもう一度見てみよう。

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一番下の列。
五芒星が21個並んでる。21はフィボナッチ数。よくみれば、二種類の五芒星があって、あわせて21個だ。

辺の長さ\phiの五芒星が13個と、辺の長さ1の五芒星が8個。
13も8もフィボナッチ数だよね。

一番上の五芒星の辺の長さは\phi^7

どの列も横の長さが同じだから……。

\phi^7=13\phi+8

になってる。
いや、それだけじゃない、同じようにこの図を見れば

\phi^7=13\phi+8\\
\phi^6=8\phi+5\\
\phi^5=5\phi+3\\
\phi^4=3\phi+2\\
\phi^3=2\phi+1\\
\phi^2=\phi+1

も成り立ってる!
この関係を使って……

「!!!!!」
ひらめいたことがあった。

「んー、これをこうすれば……」
上下に並ぶ式から\phiを消去していくと

\phi^3-2\phi^2=(2\phi+1)-2(\phi+1)=-1\\
2\phi^4-3\phi^3=2(3\phi+2)-3(2\phi+1)=1\\
3\phi^5-5\phi^4=3(5\phi+3)-5(3\phi+2)=-1\\
5\phi^6-8\phi^5=5(8\phi+5)-8(5\phi+3)=1\\
8\phi^7-13\phi^6=8(13\phi+8)-13(8\phi+5)=-1

1と-1が交互に並んでる!
さらに規則性をわかりやすくするため、最初に1\phi^2-1\phi=1を付け加えて、こんな風に書き直してみよう。

1\phi^2-1\phi=1\\
1\phi^3-2\phi^2=-1\\
2\phi^4-3\phi^3=1\\
3\phi^5-5\phi^4=-1\\
5\phi^6-8\phi^5=1\\
8\phi^7-13\phi^6=-1

フタバに見せる。
「ふうん、係数がフィボナッチ数で、どんどん大きくなってるけど、差は±1なんだねー」

うんうんとうなずいている。
「で、この式をどうすんの?」

最初は自分でもどっちに向かってるのかよくわかってなかったけど、手を動かしているうちに進むべき方向がはっきり見えてきた。闇雲にもがいて進めることだってあるんだ。
計算を進めながら答える。

「割り算」

それぞれの式を、\phi,\phi^2,\phi^3,\cdotsで割っていくと次のようになる。
1\phi-1=\frac{1}{\phi}\\
1\phi-2=-\frac{1}{\phi^2}\\
2\phi-3=\frac{1}{\phi^3}\\
3\phi-5=-\frac{1}{\phi^4}\\
5\phi-8=\frac{1}{\phi^5}\\
8\phi-13=-\frac{1}{\phi^6}

プラスとマイナスが交互になっている部分は公比がマイナスの等比数列と考えれば一つにまとめられるから、さらに変形して

1\phi=1-(-\frac{1}{\phi})^1\\
1\phi=2-(-\frac{1}{\phi})^2\\
2\phi=3-(-\frac{1}{\phi})^3\\
3\phi=5-(-\frac{1}{\phi})^4\\
5\phi=8-(-\frac{1}{\phi})^5\\
8\phi=13-(-\frac{1}{\phi})^6

よしっ

横で見ていたフタバが両手で口を押えた。それから電卓でなにやら計算して確かめると、
「リリナ凄い!そういうことね!分数の部分は公比が-\frac{1}{\phi}\fallingdotseq-0.618等比数列になってて、これは-1と0の間だから、先へ進むと、プラスとマイナスを交互に繰り返しながらどんどんゼロに近づいていくんだ!」

「そういうこと。あとは、どんどん数を大きくしてもこの関係がずっと続くのかどうか確かめれば」
「ここまで続いてるんだから、ずっと続くんじゃないのー?」

私は首を横に振る。確かめないと気がすまない。

数学的帰納法を使えばすぐに証明できそうだ。
証明したい事を数式に変換する。

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《証明したいこと》
F_{n}\phi=F_{n+1}-(-\frac{1}{\phi})^n ……①
ただしF_{n}フィボナッチ数列の第n項、\phi黄金比

《証明》
(1) まず、n=1,2のとき①が成り立つことを示す。

黄金比の性質から
\phi^2=\phi+1……②

②の両辺を\phiで割ると
\phi=1+\frac{1}{\phi}……③

変形して
1\phi=1-(-\frac{1}{\phi})^1
F_{1}\phi=F_{2}-(-\frac{1}{\phi})^1
よってn=1のとき①が成り立つ

次に、②の両辺を\phi^2で割ると
1=\frac{1}{\phi}+\frac{1}{\phi^2}……④

③-④を計算すると
\phi-1=(1+\frac{1}{\phi})-(\frac{1}{\phi}+\frac{1}{\phi^2})

(証明したい式を意識して変形していけば……)
\phi-1=1+\frac{1}{\phi}-\frac{1}{\phi}-\frac{1}{\phi^2}
\phi=2-\frac{1}{\phi^2}
1\phi=2-(-\frac{1}{\phi})^2
F_{2}\phi=F_{3}-(-\frac{1}{\phi})^2
よってn=2のときも①が成り立つ

(2)次に、 n=k,k+1のときに①が成り立っているならばn=k+2のときも①が成り立つ事を示す。
仮定より
F_{k}\phi=F_{k+1}-(-\frac{1}{\phi})^k
F_{k+1}\phi=F_{k+2}-(-\frac{1}{\phi})^{k+1}

この二式の両辺をそれぞれ足すと
(F_{k}+F_{k+1})\phi=(F_{k+1}+F_{k+2})-((-\frac{1}{\phi})^k+(-\frac{1}{\phi})^{k+1})

ここでフィボナッチ数の漸化式から
F_{k}+F_{k+1}=F_{k+2}\\
F_{k+1}+F_{k+2}=F_{k+3}
を使うと

F_{k+2}\phi=F_{k+3}-((-\frac{1}{\phi})^k+(-\frac{1}{\phi})^{k+1})

(ゴールの数式を意識してさらに変形していけば……)

F_{k+2}\phi=F_{k+3}-(\phi^2(-\frac{1}{\phi})^{k+2}+(-\phi)(-\frac{1}{\phi})^{k+2})\\
F_{k+2}\phi=F_{k+3}-(\phi^2-\phi)(-\frac{1}{\phi})^{k+2}

ここで\phi^2-\phi=1を使えば

F_{k+2}\phi=F_{k+3}-(-\frac{1}{\phi})^{k+2}

よってn=k+2のときも①が成り立つ

(1)、(2)より任意の自然数nについて
F_{n}\phi=F_{n+1}-(-\frac{1}{\phi})^n
が成り立つ
ことが示された。(証明終わり)
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「よしっ」
「おお〜」

あらためてナツの作った表に列を追加して、疑問と答えをまとめると

n 元の数F_{n} ×\phi 四捨五入した数 差の絶対値 \frac{1}{\phi^n}
2 1 1.618 2 0.382 0.382
3 2 3.236 3 0.236 0.236
4 3 4.854 5 0.146 0.146
5 5 8.090 8 0.090 0.090
6 8 12.944 13 0.056 0.056
7 13 21.034 21 0.034 0.034
8 21 33.979 34 0.021 0.021
9 34 55.013 55 0.013 0.013
10 55 88.992 89 0.008 0.008
11 89 144.005 144 0.005 0.005
12 144 232.997 233 0.003 0.003
13 233 377.002 377 0.002 0.002
14 377 609.999 610 0.001 0.001
15 610 987.001 987 0.001 0.001
16 987 1597.000 1597 0.000 0.000
17 1597 2584.000 2584 0.000 0.000
18 2584 4181.000 4181 0.000 0.000

(小数点以下4位で四捨五入)

宿題4-1
フィボナッチ数に黄金比\phiをかけて四捨五入すると、どうして次のフィボナッチ数になるのかな?
こたえ
n番目のフィボナッチ数に黄金比\phiをかけると、「(n+1)番目のフィボナッチ数-(-\frac{1}{\phi})^n」になる。
n≧2のとき-0.5\lt(-\frac{1}{\phi})^n\lt0.5だから、分数部分は四捨五入すると消える。
(フィボナッチ数列に1は2回でてくるが、「1」をF_2の1と考えれば法則が成立している)
宿題4-2
フィボナッチ数がおおきくなるにつれて、計算結果がどんどん整数に近づいていくのはどうしてかな?
こたえ
nが大きくなるにつれて、F_{n}\phiF_{n+1}の差の絶対値(\frac{1}{\phi})^nがどんどんゼロに近づいていくから。

清々しい気持ちがこみあげてくる。
難しい問題ほど、解けたときは気持ちがいいなあ。

ふとみると、フタバが、さっきの図にさらに五芒星を追加している。
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「ふっふっふ。法則性を見つけたぞー。どの列も、大小の星の並びを同じにすれば、いくらでも伸ばすことができるぞー」
「大小の星の並び?」

「ほら、大小大大小大小大大小大大小……」

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お、おお!
これはまた美しいタイリングができてる!フタバすごい!

☆★☆☆★☆★☆☆★☆☆★☆★☆☆★☆★☆☆★☆☆★☆★☆☆★☆☆★

その後もしばらく二人で色々な並べ方を試したりしてるうちに暗くなってきたので、私は挨拶をして帰ることにした。
ナツの疑問の答えがこんなところで見つかるとは思わなかったな。

などと思いながら自宅のドアを開けると、奥の部屋からタタタッと軽快な足取りが聞こえてくる。
ナツかな?何を急いでるのかな?

「リリ姉ぇ~」

正直にいって、油断していた。ちょうど今日発見したことをナツに教えてあげようなどと思っていたのに。
それなのに、いや、だからこそ、ナツの言葉に私は度肝を抜かれる。

「昨日の問題ね、あたしなんとなく理由がわかった気がする!

「えっ」

……絶句してしまった。
ナツ一人で自力であの式にたどり着いたというの?

ナツはそんな私の狼狽など気にする風もない。
単にビックリしてるだけと思っているんだろう。

「あのね、黄金比って数字にすると


\begin{array}{ccll}
\phi & = & \large{ \frac{1+\sqrt{5}}{2} } \\
 & \fallingdotseq & 1.61803398874\cdots\\
\end{array}

になるでしょ。フィボナッチの数列の隣どおしの数の比が黄金比に近づいていくってことはさ」

ナツは少し顔を寄せて声も落とす。

「公比が\frac{1+\sqrt{5}}{2}等比数列で近似できるってことじゃん」

私は混乱する。それがどうしたというのだろう。

「それはそうだと思うけど……」

ナツはハッと目を見開いて私をにらむ。

「あっ今、ちょっとバカにしたでしょ!もちろんこれだけじゃないよ!。まあこれを見てよ」

そういうと、愛用のノートPCを開いて見せる。表計算ソフトに数字が並んでいる。

「あのね、等比数列で近似してみようと思ったんだけど、初項を何にしたらいいのかわからないから、とりあえず初項1、公比\frac{1+\sqrt{5}}{2}等比数列を作って、フィボナッチの数列と並べてみようと思ったの。

項(n) F_{n} \left(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^n
1 1 1.618
2 1 2.618
3 2 4.236
4 3 6.854
5 5 11.090

「二列目の「F_{n}」はフィボナッチの数列だよ。三列目が黄金比等比数列。で、とりあえずこの二列目と三列目の割合を計算したらどうなるのかな?ってやってみたらこうなったんだけど……」

項(n) F_{n} \left(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^n \left(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^n / F_{n}
1 1 1.618 1.61803
2 1 2.618 2.61803
3 2 4.236 2.11803
4 3 6.854 2.28470
5 5 11.090 2.21803
6 8 17.944 2.24303
7 13 29.034 2.23342
8 21 46.979 2.23708
9 34 76.013 2.23568
10 55 122.992 2.23622
11 89 199.005 2.23601
12 144 321.997 2.23609
13 233 521.002 2.23606
14 377 842.999 2.23607
15 610 1364.001 2.23607
16 987 2207.000 2.23607
17 1597 3571.000 2.23607
18 2584 5778.000 2.23607

ナツが何か言いたそうに私の顔をのぞきこんでくる。
ナツが何に気が付いたのか考えつつ答える。
「四列目の数値が約2.23607に収束しているね。ということは、初項が約2.23607、公比\phi等比数列がフィボナッチの数列の近似になりそうね」

「うん、それとさ、三列目の数値が……」

私も気づく。また……これ。
「途中から小数点以下がゼロになってるね。どんどん整数に近づいているんだ」

「そうなんだよ~。これも最後のケタは四捨五入だから、完全にゼロにはなってないんだけどね。そんでさ」

ナツは眉を寄せて肩をすくめ、なんとなく『申し訳なさそうな人のポーズ』をする。
「あたしが見つけたのはここまで。でも、なんか、この謎をとければ昨日の問題がスカっと解けそうな気がするんだよ!」

「ええ……なにそれ」

さっき「なんとなく理由がわかったような気がする」と言っていたのはなんだったのか。
本当に「気がした」だけだったのかこいつめ……。
驚いて損した。

ナツは、右手をグーにして自分の頭をコツンと叩いて見せる。
「おねえさまなら、どうしてこうなるのか、わかるんじゃないかと思うの。教えてくださいおねえさま!」

「無茶ぶりにもほどがあるよ」
私は冷たく言い放つ。

とはいえ……。

宿題5-1
黄金比\phiの累乗が大きくなるにつれて、計算結果がどんどん整数に近づいていくのはどうしてかな?
宿題5-2
フィボナッチ数列黄金比\phiの累乗の比の収束値、約2.23607の正体は何かな?