Φリリナとナツのゆる数学Φ

ほんとうに、そうなのかな。ゆっくりと、たしかめて。

・oO〇 第2話 〇Oo・  13日は何曜日?

\displaystyle
【つづき】

宿題1
うるう年も含めた、実際の暦で考えたとき、13日が金曜日になる確率はどのくらいなのかな?

ナツの疑問を理解したところで、私も考えることにした。

簡単なところからはじめよう。

一週間は7日。曜日は7日でひとめぐりする。
一年は365日。7で割ったら

365\div7=52\ 余り\ 1

1あまる。だから、曜日は1年で1つ進む。
今年の〇月△日が月曜日なら来年の〇月△日は火曜日。
これは、うるう年を考えない場合。

うるう年のときは1年は366日。7で割ったら

366\div7=52\ 余り\ 2

だから、うるう年のとき、曜日は1年で2つ進む。
……正確に言えば、2月29日を挟むとき、だけど。

うるう年は4年に一度。だから、曜日は4年ごとに1+1+1+2=5……5つ進む。

7と5は互いに素だから、これを繰り返していけば、曜日の出方の偏りはなくなり、すべての曜日が均等に表れる……ように思える。

しかし、まだ考えるべきことがある。
うるう年には、もう少し細かいルールがあったはずだよね。

うるう年のルール
①西暦年が4で割り切れる年はうるう年。
②ただし、西暦年が100で割り切れる年は平年。
③ただし、西暦年が400で割り切れる年はうるう年。

たとえば、2018年はうるう年じゃない。
2020年はうるう年。
2100年はうるう年じゃない。
2400年はうるう年。

よし。うるう年の法則は確認した。
400年ごとにくりかえしだから、400年で曜日がどれだけ進むか調べよう。

うるう年は400年の間に、……

400 \div 4 - 400 \div 100 + 400 \div 400 = 97

97回だ。
だから、400年の間に曜日が何日ずれるかというと……

400+97=497

497日。497を7で割れば……

497\div7=71\ 余り\ なし

割り切れた!

つまりある年の〇月△日が月曜日ならば、400年後の〇月△日も月曜日ということ。

曜日は400年ごとに繰り返す!

私は予感する。
400年ごとに繰り返すということは、もしかして、曜日は不均等になるんじゃないのかな?

だって、400年の間に13日になる回数が7の倍数になるとは思えない。たぶん。
……たぶん?

下を向いて首を振る私を見てナツが不安そうな表情になった。
勘違いされたかな。

私はただ、自分の性格に改めて気づいてしまっただけ。
そう、たぶんという言葉が私は嫌いなんだと思う。

計算すれば確かめられるんだから、「13日」は400年に何回なのか。

結果の予想はつくけれど、それとこれとは話が別。
確かめなければ、気が済まないのだ。

ゴホン。ともかく……
「13日」は月に一回必ずあるから、

12\times400=4800

400年で4800回。4800を7で割れば

4800\div7=685\ 余り\ 5

割り切れないな。

「よしっ」

つまり、400年の間に7つの曜日は絶対に均等には現れないということ!

ここまできたら、その回数を調べたいけど、流石に手作業ではメンドくさすぎる。
私の計算を見守っていたナツに微笑みかける。

「ねえ、ナツはパソコン得意だよね?」

ナツはウヘェともアゥウともつかない変な声を出す。返事なのかそれは。

「パソコンのカレンダーで、13日になる曜日の回数を数えてよ。そしたら、あなたの疑問が解けるよ」

「なんだ、そんなこと?簡単だよ。それで、どのくらい?」

「ちょうど400年ぶんでいいよ。4800月分の13日の曜日を数えてちょうだい」

「よ……よん……!!」

f:id:mouse-ex:20180714114637j:plain

口をパクパクしている。

30秒くらい壁に向かって斜め上を向き、指先をピクピクさせて放心していたが、突然目の焦点が戻り、バビュンと振り返ってニへッと笑う。

……ちょっとその笑い方、怖いよ。

「曜日の数を数えればいいんでしょ。それだけなら、表計算ソフト使えばすぐできると思うよ」

そして本当にパパッとPCを操作して私にみせて言う。*1

「2001年から2400年の400年分の13日の曜日の内訳だよ」

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さすがナツ。私にはできない芸当だ。
改めてじっくり見てみる。

曜日 回数
日曜日 687回
月曜日 685回
火曜日 685回
水曜日 687回
木曜日 684回
金曜日 688回
土曜日 684回
合計 4800回

ああ……こんなに偏るとは。
最少は684回、最大は688回。4回も違う。

ナツが表を眺めて呟く。
「一番多いの、金曜日だね」

13日が何曜日になるかの確率を考えたとき、金曜日になる確率は\frac{688}{4800}
\frac{1}{7}よりもちょっと多くて、曜日の中では一番高い。

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宿題1
うるう年も含めた、実際の暦で考えたとき、13日が金曜日になる確率はどのくらいなのかな?
こたえ
\frac{1}{7}よりもちょっと多くなる(\frac{688}{4800} )。7つの曜日の中では金曜日になる確率が一番高い。


ナツが感慨深げに言う。

13日の金曜日って、なんとなく珍しいもんだと思ってたけど、こうしてみると、一番めずらしくない曜日なんだねぇ」

「そうだね。むしろ一番多いんだね」

「ちょっと意外だね」

「うん……」

壁にかかったカレンダーを見る。カレンダーの曜日は毎年変わるけど、今までの考えをまとめると、結構規則的に変わってる気がする。

曜日って計算式で求められないのかな?

そうだ、ちょうどナツがPCを開いたままにしている。

「ねえナツ、ちょっと検索してみて欲しいことがあるんだけど」

「ほよ?なにかな~」

「曜日ってカレンダーみなくても、なにか、こう、こんな感じで、計算してわかるような方法がありそうな気がするの」

指を動かして電卓を動かすマネをする。

「ん?カレンダー?指で?」

ナツが検索サイトにキーワードを打ち込んでいる。『カレンダー』……『指』……

そんなキーワードでいいのかな……。

ナツが振り向く。目が笑っている。

「あったよ!『指カレンダー』」

suzuki-kentaro.hatenablog.com

なんと、指カレンダーですと?!

ていうか、指カレンダーって何?

二人でPCの画面をのぞきこむ。

年月日から、片手の指だけで曜日を計算できるのだという。
思ってたのとちがうけど、これはこれで興味を惹かれる。

ふむふむ。くわしいやり方を読んでいく。

まず、左手の人差し指、中指、薬指の各関節に0~6の数字を対応させる。
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0~6の数字は月曜日~日曜日にも対応している。
f:id:mouse-ex:20180802230426j:plain:w150

1月~12月との対応はこう。
f:id:mouse-ex:20180802230516j:plain:w240

月の位置を覚えるのが少し面倒かと思ったけど、1月、2月……と順番に指を押さえてみると、規則性があるから、2~3回やればすぐに覚えられる。
押さえるのは左手の親指でも右手の指でもかまわない。

それから、ルート1、ルート4、ルート5というのはそれぞれ1、4、5の足し算のことだ。

たとえばルート1なら1足した数のところへ移動する。6の次は0だ。

ルート4は4を足すか、足せなければ3を引けばいい。

ルート5は5を足すか、足せなければ2を引けばいい。

うん、だいたいわかった。
これなら簡単にできそうだ。

「試してみようよ!」

ナツの提案に私もうなずく。

まず、押さえる指の位置の確認。

数(曜日) 0(月) 1(火) 2(水)
押さえる指 f:id:mouse-ex:20180731214839j:plain:w120 f:id:mouse-ex:20180731214850j:plain:w120 f:id:mouse-ex:20180731214904j:plain:w120
3(木) 4(金) 5(土) 6(日)
f:id:mouse-ex:20180731214917j:plain:w120 f:id:mouse-ex:20180731214521j:plain:w120 f:id:mouse-ex:20180731214931j:plain:w120 f:id:mouse-ex:20180731213337j:plain:w120

じゃあ、とりあえず2018年7月13日が何曜日か試してみよう。

Step1
最初は月の位置。7月は薬指の先、「6」の位置。薬指の先を押さえる。
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f:id:mouse-ex:20180731213337j:plain:w240

Step2
押さえている位置を移動せずに、 1と数える。(……1)

Step3
D(13)を超えない限り、7ずつ足した数を数える。(……1+7=8)
ただし押さえている位置は移動させない。

Step4
D(13)を超えない限り、1ずつ足した数を数える。(……8+5=13)
ただし数を数えるごとに押さえている位置はルート1に従って移動させる。

5つすすむから、押さえる指は4になる。(6→0→1→2→3→4)
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Step5
押さえている位置を移動せずに、Y(2018)以下で最大の400で割ると1余る整数を数える。(……2001)

Step6
Y(2018)を超えない限り、 100ずつ足した数を数える。 ただし数を数えるごとに押さえている位置はルート5に従って移動させる。(……2001)

Step7
Y(2018)を超えない限り、20ずつ足した数を数える。ただし数を数えるごとに押さえている位置はルート4に従って移動させる。(……2001)

Step8
Y(2018)を超えない限り、4ずつ足した数を数える。ただし数を数えるごとに押さえている位置はルート5に従って移動させる。(……2001+4+4+4+4=2017)

押さえる指は3になる。(4→2→0→5→3)

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Step9
Y(2018)を超えない限り、 1ずつ足した数を数える。ただし数を数えるごとに押さえている位置はルート1に従って移動させる。(……2017+1=2018)

押さえる指は4になる。(3→4)
f:id:mouse-ex:20180731214521j:plain:w200

Step10
Y(2018)年が閏年で、かつ3≤Mの場合は、押さえている位置をルート1に従って1回移動させる。(……あてはまらないので動かない)

これで終わり。

押さえている指の位置は「4」……金曜日だ!あってる!
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よしっ

「あはは、すごいねこれ。今度友達に教えてあげよー」

無邪気に喜んでいるナツ。
私はあらためて指カレンダーの動かし方を確認する。

Step5のところ。
「400年ごとに曜日がくりかえす」から、Step5が使えるんだ。
Step6~8も、自分で確かめた曜日の進み方とあわせて考えれば仕組みがわかる!

ああ、なんだか気持ちがいいなあ。

気が付いたらセミはもう鳴いていない。
眠ってしまったのかな。

宿題2-1
あなたの誕生日など、好きな日の曜日を指カレンダーで計算してみましょう。

(この宿題に解答はありません)

宿題2-2
曜日を数式で計算する他の方法をしらべてみましょう。

(この宿題の解答例は次回)

【つづく】

*1:ここでの操作の解説 ①「フィル」→「連続データの作成」で400年分の日付を入力 ②関数「text(セル,"aaaa")」で日付を曜日に変換 ③「挿入」→「ピボットテーブル」でピボットテーブル(集計の表)を作成 ④ピボットテーブルに表示する要素を曜日の個数に設定